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公開フォーラム「グローバル競争化における知の創造と人材育成」参加報告
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◆公開フォーラム
「グローバル競争化における知の創造と人材育成」参加報告
(日本ナレッジ・マネジメント学会 企業評価研究部会 松本 優)
2007年12月22日(土)東京経済大学国分寺キャンパスで開催された、知の創造研究会主催、日本ナレッジ・マネジメント学会協賛の公開フォーラム「グローバル競争下における知の創造と人材育成」に参加しました。そのときの報告です。
日時:2007年12月22日(土)午後1:00−5:40
場所:東京経済大学国分寺キャンパス 6号館7階大会議室
主催:知の創造(組織学習・人材育成)研究会
協賛:日本ナレッジ・マネジメント学会
★フォーラムの概要
これはメインが知の創造(組織学習・人材育成)研究会(東京経済大学植木英雄教授代表)が日本学術振興会から科学研究費助成金を得て実施した研究プロジェクトの成果発表会で、それに華を添えるかたちで基調講演や事例発表、パネル・ディスカッションを行ったもの。また、この行事はわがKM学会が協賛し、森田理事長が来賓
として挨拶をされた。なお、出席者には、関西、中部からの研究者もおり、企業人、市民等総勢100名を超す出席者があり、最後まで熱心に聞き入っていた。
★研究プロジェクトメンバーは(敬称略50音順)
植木英雄(東京経済大学教授=代表)、植木真理子(京都産業大学准教授)、齋藤雄志(専修大学教授)、宮下清(首都大学東京教授)
★セッションの内容
1.特別基調講演:“Advances in Knowledge
Management”(ナレッジ・ マネジメントの進歩)
講演者:Francis D. Tuggle氏(前アメリカン大学経営学部長、チャップ マン大学教授,
INSIGHT CONSULTING パートナー)
*海外から招聘した講師による特別基調講演は今回の米国側の調査メンバーでもあるFrancis
D. Tuggle(タグル)教授より上記テーマでの講演。米国におけるクライスラーの販売会社のKM事例、経営者にKMの価値を認めさせるため保守部品の管理でKM手法を使った場合と使わないケースを実際にやらせてみて必要性を認めさせた話等。
2.日本学術振興会・科学研究費助成成研究プロジェクトの研究成果報告:「知の創造を促す組織学習と人材育成」
司会・討論者:馬越恵美子氏(桜美林大学教授・異文化経営学会会長) 報告者:植木英雄氏、植木真理子氏、齋藤雄志氏、宮下清氏
*これが本日のメイン。馬越恵美子氏の司会で植木英雄氏と植木真理子氏による研究成果の報告。それに対して馬越氏からの質問と評価。研究メンバーの齋藤氏、宮下氏が補足するという形。
内容としては、日米の主要な自動車、情報機器企業28社を4年間実態調査し、延べ200名を超える管理者とのインタビュー調査、75の質問票に対する1106名からの回答結果を統計解析し、知の創造を促進する要因を解明、その結果あるいは途中結果を報告してくれまし
3.講演:「情報機器企業、自動車企業における知の創造活動の展開」
講演@ 堀越知一氏(富士通株式会社・渉外政策推進本部長)
講演A 阪口正坦氏(日本ヒューレット・パッカード株式会社・執行役員HPサービス品質管理統括本部長)
講演B 久米克彦氏(スズキ株式会社常勤監査役,日本ナレッジ・マネジメント学会専務理事)
*講演3つは調査対象企業の中からKM先進企業の富士通、日本HP、スズキの3社より実践事例の発表。司会は斎藤氏。
富士通堀越氏は「富士通の目指すこと」と題して会社の方向性の話、日本HPの阪口氏は「日本HPの顧客価値創造活動とサービス品質」と題しサービス部門の具体的なKM活動の事例を紹介。
スズキの久米氏は「『中小企業』スズキの生き残りの知恵」題しユニークな経営理念・戦略と活動状況や会社の持っている知恵(風土)を紹介。
4.パネル・ディスカッション:「グローバル競争下における知の創造と人材育成のあり方」
司 会:植木英雄氏
パネラー: 堀越知一氏、阪口正坦氏、久米克彦氏、宮下清氏
*パネル・ディスカッションでは、宮下教授から知の創造と人材育成のあり方として、具体的な論点の問題提起があり、それに対応して、3社の事例の補足説明があった。
富士通からは、新たな職能の開発としてフィールドイノベータの育成、知や場の共有の仕組みなど。日本HPからは、プロジェクトマネジメント ラーニングコミュニティにおける経験共有の「場」について具体例か報告された。
スズキの久米氏は、トップ主導による現場主義の徹底と人材育成、「経営者マニュアル」
(失敗から得た経営上の教訓の形式知化)、企業文化の共有化等について具体例を報告された。
次いで、メンバー間のやりとり、会場との質疑の後、最後に司会の植木氏より、明確な経営理念・ビジョンの共有化と人間味のある多様性を尊重する企業文化、オープンなコミュニケーションの場づくり等により、失敗から学ぶ組織学習と創造的な人材育成や「知の創造」を促進させていくことの重要性が総括的にまとめられ、終了。
●感想
それぞれのセッションとも非常に興味深いためになる内容でした。
内容については紙面の都合であまり紹介できませんが、その中で個人的に印象に残った(あるいはおもしろかった)のは、*基調講演のタグル氏の話の中で暗黙知、形式知の他に第三の知識形式があるという話で、それはコンピュータの中にあるということだったのでWeb上で形成される集合知(智)をイメージした。
*もうひとつは優れたイノベーションはエンジニアからではなく、むしろ組織内外のエンドユーザーからもたらされていることが多いことがわかった。だから企業は、現場をサポートするKMポータルを設計してエンジニアとエンドユーザーが出会えるようにする必要がある、という話。なるほどと思った。
*メインの研究成果の報告は大変有益なもので、事前の研究で導いたKM理論(研究仮説)が調査結果の分析で実証されていた。
その内容については3月29日のKM学会年次大会(場所:東京理科大)にて植木教授が特別講演「「知の創造と人材育成」(仮題)」でさらに詳しくお話しされる予定なので、そちらをお楽しみに(ぜひご参加いただき直接聞いてください)ということでここでは触れないでおきます。
さわりでない部分の話では調査データを見せられ素人の私にも理解でき面白かったこととして、日米比較では平均値で見ると両者にはほぼ相関があったが、自動車会社も情報機器会社ともアメリカのほ
うが若干意識 (KMは役に立つからやるべきだという意識)
は高いが実態は低い(日本のほうが高い、効果を挙げている)という結果が出ていた。つまりKMに対する意識は高いのだが現実には(現場は)それほどやってない。一方日本ではKMについての意識はあまり高くないのだが意識しないで知らず知らずのうちに現場では社員の英知を結
集して(業務改善・改革を)やっているということですかね。(^_^)
*企業の事例は夫々素晴しかったが筆者はスズキ(株)のお話が一番印象に残った。
生き残りの知恵として@大企業にはならない、中小企業のままでいよう。Aトップになれる国に進出しようということでインドに進出してトップになった。B徹底した現場主義と人材育成に力を入れている点。トップの率先垂範現場指導、スピード意思決定。ベンチマークの活用。方針変更・朝令暮改も大いに結構。などすばらしいと
思った。(スズキはでかくならないからこそ会社も車も賢くて小回りが利くのですね(^_^))
*パネルでは失敗に学ぶことが大切で、失敗事例の共有の場(仕組み、風土)作りが大切だという意見で盛り上がっていたが共感。
*終了後に行われた懇親会(情報交換の場)もいろいろな人と話せ、知り合いになれて有益だった。
●この後に講師の久米氏から寄せられた「フォーラム雑感」の記事があります。その中にスズキにおける「経営の問題意識の共有」についても書かれており参考になります。
なお、KM学会で新たに「知の創造」研究部会が創設されます。
(研究部会長:植木英雄教授、連絡先E-mail:h-21ueki@tku.ac.jp)
ご期待ください。(以上松本)
◆フォーラム雑感
(日本ナレッジ・マネジメント学会 専務理事 久米克彦)
1.企業KMは経営の問題意識の共有から
12月22日に東京経済大学で行われたフォーラムにパネラーとして参加した。テーマは「グローバル競争化における知の創造と人材育成」であり、日本ナレッジ・マネジメント学会も協賛する形で森田理事長以下数名が参加したものである。小生は5月に東京経済大学の植木教授の依頼で「スズキの生き残りの知恵」について講演した。いわばそのまとめ版みたいな形で再度フォーラムに参加を頼まれた。
小生はスズキ鰍ノ監査役として職を食み、学会の専務理事に名を連ねているものであるが、どちらもどれだけの実力があるか聴かれると、忸怩たる思いに身を縮めるしかない。しかし「門前の小僧」の例えもあり毎日スズキの経営トップの近くでうろうろしていると(言うまでもないが監査役は取締役の経営行為にチェックをかけるのが主な仕事である。)、自然にスズキの経営哲学を学ばされている自分を時々発見するので面白い。「面白い」というのは、大変いい加減で評論家的な表現である。この「評論家的」というのがスズキでは最も嫌われ軽蔑される。なぜなら言うだけで自ら責任を持って実践しない、という意味だからである。一般的に、ともすると監査役の毎日が多分その様に見られかねない。だから自ら問題を発見すべく現場を歩き回ることになる。
ところでスズキでは、経営トップから具体的な一つ一つの事例について「これででいいのか」と、役員昼食会など非公式な場や取締役会など公式な場で各役員が具体的課題に対する対応を問われて議論をする。そうしている間に、ある時トップの問題意識が理解出来て、時々愕然となることがある。
しかしこの「問題意識の共有化」が来る日も来る日も行われている間に、不思議にも何の問題意識すらなかった自分の中に「そうか、経営者の意識というのはこういうことなのか」という理解が生まれてくるから面白いのである。つまり監査役という立場で極めて冷静に見ているはずの自分がいつの間にかその中に取り込まれているから面白い。こうしたトップの意識が理解されると、別の課題にも応用ができる。と思って安心していると裏切られることもある。更にもう一段と深い考えがあって結論が180度違ってくる。そうは問屋が卸さない、というわけだ。
だからどの役員も決してあやふやな結論は出せない。後で必ず問われる。また傲岸な態度では持たない。常に人に学ぶ謙遜さが求められる。日頃から何が出来るというわけでもない自分ですらこのようなことが、少しずつ理解できるようになったのは進歩でしょうか。そうなってくるとこの理解したものを身近なところで何とか実践したいという欲望が生まれてくる。
他愛もなくスズキの実例を中心にまとめて講演では話をしたが、参加者の中、実業の世界に身を置いている方々にはよくご理解頂けたようだ。問題意識の共有こそが企業でのKMのスタートだと確信している。
この大学は近隣の住民を対象に社会人教育のプログラムを行っており、その中に今は悠々自適の生活に入っている小生の銀行時代の先輩がいた。今でも学究的探究心を失わずにおられる先輩達がこうしたフォーラムに学生に混じって参加されるのには敬意を表したい。とても学究的探究心の欠片すら持ち合わせない小生なんかとは少々出来が違うようだ。だがこれまで常に安易な方に流され波のまにまに生きてきた自分を反省し、少しでも先輩に近づこうと決心した。言うだけでは評論家となるので、何とか実践する方策を考えたい。
2.パーティーの意義
当日フォーラムの後、パーティに出席して皆さんとコミュニケーションする機会を頂いた。結論的に言えば小生は最後までいた出席者の一人であった。パーティーは元々情報交換の場所であり、飲み食いする場所ではない。その意味ではこじんまりとしていたが内容のあるパーティーだったといえる。
小生は銀行時代に海外生活が12年と長い方だが、若い時からパーティーと名の付くものを主催者として随分経験させてもらった。経験からするとアングロサクソンのパーティーを少し我々日本人も見習う必要があると思う。本来彼らのパーティーのあり方は狩猟民族の情報交換から来ているような気がする。「森の西で鹿を昨日見たぞ」とか「1週間前東の沼の近くでウサギを取った」とか、こうした情報の一つ一つが自分の生き残るために大変重要なものである。こうした情報交換の場がパーティーである。自分も情報を出す代わりに相手からも情報を聞き出すというまさにGive
& Take の論理が通用する世界である。
一方で日本人のパーティーは、基本的に「ご馳走の場」である。農耕民族であり山海の珍味に恵まれている日本人の習慣から、共に田植えや稲刈りなど働く仲間同士で飲み食いを一緒にすることで一体感の醸成、仲間意識の醸成というものが日本人のパーティーの原理であり、好むと好まざるに拘らず酒を交し料理を共にする。また料理が粗末だと文句を言う人が必ずいるのも特徴である。日本企業のパーティーで、こうしたクレームを受けた途端それまでコストセーブで出す皿数を控えめにと指示していた上司が急に、「寿司の皿を何でもっと出さないんだ」と部下を怒鳴る風景も見られる。一般論として、外国人からは日本企業のパーティーはご馳走攻めというのが定評である。だからそこに出てくる人達は、美味しい日本料理をともかく食べられるだけ食べることを目的とする人間すらいる。
でもグローバルスタンダード流に言えば、パーティーの主催者としての評価は、どんなVIPに出席して貰えるのか、どの位(時間)パーティーに時間を割いてくれたかであり、ご馳走ではない。参加する側からしてもどんな人間とそこで会って話が出来るのか、がパーティーに出る意味である。オランダのアムステルダムで開催されたスイス銀行の開設記念パーティーはその意味で印象的であった。監督官庁であるオランダ中央銀行のお歴々をはじめ、オランダの主要銀行のVIPを集め、外国系銀行のトップ経営層を招待した。場所が良かった。ヴァンゴッホ美術館の1階ロビーを使ったもので、そのために飲み食いは直ぐ身の回りにゴッホの絵があるため、多少控え目にしたのであろうが、ワインとチーズ(とても大きなものが用意され焼き鏝で溶かしてパン切れと一緒に食べる)、それにカナッペ程度であった。元来がグラスワイン一杯で数時間しゃべっている連中なので、むしろ豪勢なぐらいの「ご馳走」の部類であったかもしれない。「日本人からすれば「えっ、これしかないのか」だが。専ら情報交換に専念出来たパーティーであった。
ところでこのフォーラムのパーティーも若い人たちとのコミュニケーションが出来たことでとても意義があった。それよりも何よりも極めて意義のあったのが、当日の基調講演をしてくれたチャップマン大学のタグル教授との会話であった。タグル教授は何度か来日しているが日本に関心が深いようであった。小生の話が興味深かった、というSweet Wordsの後の言葉がとてもこちらにとって興味深かった。それは彼が「日本はまだまだ頑張れる」と言ったことだ。「日本は高齢化、人口縮小でお先真っ暗なのにどうして」と言ったら理由は次の二つであった。
1)日本にはロボット技術がある。
2) KMを組織的に実践している点では日本の企業が進んでいる。
これらの点で日本は競争で勝てる。だからそんなに悲観的になる必要はない、と言うのが彼の論点であった。これだけの情報が得られ単純な小生は暗くならずに済んでいる。パーティーに感謝。
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