■企業調査プロジェクトの概要■
 当企業調査プロジェクトを下記の主旨でスタートさせることが、2004年6月22日(火)に開催されたKM学会東海部会において決定された。

●調査目的:
 企業において新知識を創出するにあたり最も重要な、「ひらめき」を喚起する条件を実証的に探るとともに、「ひらめき」の結果創出された知識共有の仕組みとしてどのようなものがあるかを、現実の企業の中に探っていきたい。 また、組織内に潜む”秘伝”や”思い”の共有、”匠の技”の創出・伝承が企業存続と発展にとって必要不可欠と思われるが、それが、実際にはどのように行われているか、企業の現場でのKM(Knowledge Management)の実践の様子についても理解を深めたい。

●当調査の理論的根拠(当東海部会座長、大西教授による考察):
 KMの基本理論ともいうべき野中理論においては、「暗黙知」の概念は曖昧で多義的である。そこで「暗黙知」・「形式知」の区別に代えて「身体知」「頭脳知」の概念を導入し、更に「知識創出」「知識共有」をその分析軸とし、ナレッジを4象限に分類してみたい。  そのような視点から野中理論を再考察してみると、いわゆる「ひらめき」と言われる部分の区別をはっきりさせることができていないことが分かる。また、「身体知」たる”匠の技”と、「頭脳知」の”秘伝”や”思い”が、同一にカテゴライズされてしまっている。しかるに、企業において一番重要なのは「ひらめき(=頭脳知&知識創出)」のはずだ。「ひらめき」の結果として新知識が創出されるからである。この「ひらめき」を可能とする条件を実証的に探る必要がある。また、「頭脳知」の共有と「身体知」の創出についても、同様に探る必要がある。

●調査対象企業:
 そもそもKM理論は、野中郁次郎教授と竹内弘高教授によって世界に発信された日本的経営の真髄である。「人」を重視する経営が、なぜ日本企業に優れた業績を継続的にもたらすのか、お二人が日本発の経営理論として纏めて発信したところ、世界に大きな反響が巻き起こった。これが日本に逆輸入されることになったのがKM理論である。  このような経緯から、まず、「KM先進企業なら、必ず高収益を実現しているはず」という仮説を立ててみた。その後、「高収益の日本企業を分析すれば、その内部に潜む何がしかのKMの実態が分かるに違いない」という、逆から見た第二の仮説を立てるに至った。  これを実証すべく、調査対象企業として下記条件の企業を選定することになった。

@名古屋地区に本社がある製造業
(@東海部会の立地条件、A近年、名古屋地区の製造業に高収益企業が多い、B会員が訪問しやすい)

A東証二部あるいは名証二部以上の企業
(@情報が開示されている、A情報の信頼性が高い、B調査に対する協力度が高いと予想される)

B直近数年間、成長を継続しており、売上高営業利益率が8%以上と高い企業
(@この条件を満たしていれば、優良企業と考えられる)

●調査活動:
 対象企業の第1号として、選定基準のすべてに見事に適合した、株式会社ダイセキを選定させていただいた。 この後、毎年1社程度ずつ選定し、東海部会メンバーの協力のもと、調査活動を継続させることにしたい。