No.1 2007年6月1日発行 | 日本ナレッジ・マネジメント学会

メールマガジン

No.1 2007年6月1日発行

 日本ナレッジ・マネジメント学会メールマガジン 第1号
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 日本ナレッジ・マネジメント学会メールマガジン
 第1号   2007/06/1
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編集・発行:日本ナレッジ・マネジメント学会(KMSJ)事務局

□ 目次

[学会からのお知らせ]
◆ご挨拶
(日本ナレッジ・マネジメント学会理事長 森田 松太郎)

◆学会のメルマガ・ホームページ再構築計画
(日本ナレッジ・マネジメント学会理事 岩岡 保彦)

[特別寄稿]
◆新装ホームページ及びメルマガの発刊に際して
(日本ナレッジ・マネジメント学会理事長 森田 松太郎)

[学会員からの寄稿、活動報告]
◆リスクマネジメント研究部会平成19年度報告(1)
(日本ナレッジ・マネジメント学会 名合正二)

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◆ご挨拶
(日本ナレッジ・マネジメント学会理事長 森田 松太郎)

学会員の皆様お元気で過ごされていることとお慶び申し上げます。

 当学会はお陰さまで設立以来10年の月日が経過いたしました。
その間におけるITの発達と社会における浸透は目を見張るものが
あります。

さて、当学会発足以来続けてきましたKMレポートは、変化の激しい
時代に即応できず、また、会員間の交流に関しても問題がありました
ので、今回平成19年6月1日を期して、新たにホームページとメールマ
ガジンを一新、スピーディに情報を提供し、時代の変化に即応できる
態勢をとることに致しました。同時に従来不十分であった会員間の連
絡を密にする手段として活用し、会員間の情報共有を促進することに
いたします。

今後KMレポートは年1回の発行にし、ホームページとメルマガで会
員間の交流を促進したいと思いますので、改正の趣旨をお汲み取り頂
き、会員間の交流と知識の共有を促進し学会の更なる信頼と発展にご
協力いただきたいと思いご案内申し上げます。

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◆学会のメルマガ・ホームページ再構築計画
(日本ナレッジ・マネジメント学会理事 岩岡 保彦)

 この度、日本ナレッジマネジメント学会のメールマガジンを発行
することになりました。従来は企業評価部会のメルマガMAKE FLASH
が学会員全員に配布され、発行数は80回に達しています。これを
発展的に解消して、学会全体へ拡大して活用することを目的として
います。
 行く行くは発行回数を増やして行きますが、当面は月1回の発行
から始めます。有志による編集委員会を設けて事務局を支援します。
各部会の情報や皆様の記事原稿を事務局にお送り下さい。記事には、
他のメルマガの協力を得て引用・転載も含めます。他所で良い記事
を見付けられたら是非ご一報下さい。

 学会では、会員活動の積極化を図るために、メルマガのみならず
ホームページも再構築する計画を進めています。従来は、学会ホー
ムページに関して一切を事務局に依存していましたが、今後は会員
有志や各部会の支援体制を構築するつもりです。
 第1段階として、以下の3点を実施します。
  (1)学会の公式資料の確実な保存と、その参照・引用、ダウンロ
   ードを容易にする仕組み
  (2)学会からのお知らせ、イベント情報などの提供頻度改善
  (3)メルマガ記事に関連する書類の掲載 (メルマガには本文だけ
   を掲載し、書類は添付しない)
(1)によって、KMReportをダウンロードして頂くことで、印刷・郵送
コストを削減できます。
 第2段階としては、会員に限定した運用になりますが、
  (4)会員が自由に書込んで意見交換ができる場の提供
  (5)各部会が自ら掲載・削除・更新・改訂ができる部会サイトの
   構築
(4)によって、情報を共有するだけでなく、新たな発想や創造が期待
できます。

 この計画の実施には、興味・知見・経験のある会員の皆様の協力
が必要です。基本的にボランティア活動ですが、是非この計画の推
進に参画して頂きたくお願い致します。
連絡先は学会事務局です。

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◆新装ホームページ及びメルマガの発刊に際して
(日本ナレッジ・マネジメント学会理事長 森田 松太郎)

 日本ナレッジ・マネジメント学会も早いもので設立以来10年を経
過しました。ここで改めて学会について考えてみたいと思います。
その前に簡単に私の履歴について触れてみたいと思います。
 私は、昭和4年1月北海道の札幌市に生を受けました。祖父は南部
藩の武士で五稜郭の戦いで破れ、北海道を転々とし日高のアイヌの
家に5年くらい逼塞していたらしい。私の父は道産児1世ですから私
は道産児2世ということになります。
 私は北海道大学で当初戦時中に農林専門部林科に学び、その後農
学部で農業経済学科に進みました。卒業後三菱系の商社に勤めまし
たが、3年間で2度会社が倒産したので、サラリーマンを諦め、小樽
商科大学経理経営専攻科で1年間勉強し、公認会計士試験に合格、
公認会計士の道を歩むことになりました。
 公認会計士開業の後、監査法人朝日会計社の設立に参加し、代表
社員に就任し会計監査を長い間担当することになりました。
 会計監査を通じて会社の経営を第三者としてみる立場になり経営
について考えさせられました。日本は敗戦以来困難を克服し、経済
成長の道を歩み、世界的には日が昇ると称されるほど発展をとげま
した。各企業は日の昇る勢いで業績をのばし、世界に雄飛していき
ました。その後バブル期を経験、その間にアメリカの会社は飛躍的
に経営内容を改善、かっては日本式経営がもてはやされましたが、
アメリカの経営を学ばなければならないという具合に変化しました。
 一体何が起きたのであろうか非常に疑問でした。
 日本の経営は、デミング博士の教えで製品の品質は良かったが、
会社のマネジメントに問題があると認識されてきました。日本が飛
躍を続けていた間に、アメリカは日本式経営を研究しその上を行っ
たわけです。それはあたかも、戦時中にアメリカが日本のゼロ戦の
性能に手を焼いていたとき、不時着したゼロ戦を手に入れ徹底的に
分析して対抗できる戦闘機を開発ゼロ戦に勝ったのと同様であると
感じました。
 私は、その頃朝日監査法人(現あずさ監査法人)の理事長になり、
また朝日はアーサーアンダーセンの世界機構のメンバーであったの
で、私は世界機構のエクゼクティブ・コミッティのメンバーでにな
り、アンダーセンの顧問であったドラッカー先生と親しく話をでき
る機会を多く持つことが出来ました。
 アンダーセンはコンサルティングに伝統と特色を持った会計事務
所で、アンダーセンコンサルとアーサーアンダーセンの2大事業部門
を有していました。主として会計を担当していたアーサーアンダー
センにもアンダーセンコンサルティングと一味違ったビジネスコン
サルティングの部門がありました。
 日本の経営とアメリカの経営を比較すると、アメリカは大量生産
による原価削減から、ナレッジを使った価値創造へと進化している
ことが分かりました。丁度アーサー・アンダーセンのビジネス・コ
ンサルティング部門とAPQC(American Productivity & Quality
Center)が共同してベスト・プラクティスを構築していました。
 日本の経営とアメリカの経営の違いは価値創造にあるのではない
かと思い、その基礎はどうやらナレッジ・マネジメント(KM)に
あると考え、私が朝日監査法人の理事長を退任したのを期に日本総
合研究所の花村社長と相談し同研究所の高梨理事とともに日本ナレ
ッジ・マネジメント学会を設立しKMを研究することになりました。
 学会の会長には花村社長のアドバイスで三菱総合研究所の会長を
なさっていた長老の奈良さんにお願いいたしました。設立当初は日
本のシンクタンクである総合研究所を中心にしてナレッジに関心の
ある会社と個人が主なメンバーで、学者先生は野中先生、竹内先生、
嶋口先生、一條先生などごく限られたメンバーで実務家を主にして、
実務の中のナレッジを研究することを先ず主眼をおきました。
 設立後ナレッジの先進国であるアメリカを視察することになり、
先ず、カルフォルニアのクレアモントでドラッカー先生にお願いし
て、一日ナレッジに関するセミナーを開催しました。参加者一同先
生の話に大変感銘を受けました。
 次いでヒューストンにとびAPQCを視察しKMの実際にふれ教
育の大切さについての話を聞きました。次にシカゴに飛びアーサー
アンダーセンのパートナーからベストプラクティスについての説明
を聞き感銘をうけました。
それから、ワシントンDCにとび郊外のウイリアムバークで開催さ
れていたAPQCの年次大会に出席し、多数の分科会に手分けして
出席しアメリカの企業のナレッジの責任者からその会社のナレッジ
・マネジメント主としてナレッジ・シェアリングの手法と実際にふ
れ、日本の現実とのギャップに愕然としました。これが日本の経営
が負けた真の原因なのだと再認識した。それにしても短期間のうち
に大変なギャップが生じたものだとショックを受けました。
 次の年には、ヨーロッパのKM事情の視察ツアーを組みました。
先ず野中先生にご紹介いただきフィンランドのノキア本社を訪問し
副社長からノキアのKMについての説明を聞きました。その頃野中
先生はノキアの顧問をされており、会社は我々を丁重に扱い丁寧に
説明していただきました。ノキアは透明性を非常に重んじており、
会社の本社も玄関を入ると真正面がガラスの大きな窓で湖が素通し
で見え、物理的にも透明性を実感させられました。
 ナレッジの共有も実行されており、問題を決済するには3人の署
名でOKということでした。決裁権を持つ人は、絶えず現場と問題
点を共有し、スピーディに問題を解決し、顧客の満足度をあげる努
力をしていました。本社の1階には大きな帆柱があり、考え方は
We are on the same Boat と言うことでした。つまり、会社の全
員と顧客は同じ船に乗っているというコンセプトであるということ
でした。
 次いで、ドイツのシュッツガルトに飛びメルデセスベンツの本社
を訪ね、丁度クライスラーと合併したので両社のナレッジの共有に
ついて話を聞きました。知識の共有については、先ずバーチャルで
ユニバーシティをつくり中堅幹部の約3000人が生徒になり、生産に
ついては主としてメルセデスの方法を共有し、販売についてはクラ
イスラーのやり方を勉強したとのことで、お互いに刺激を受けクリ
エティブであったといっていました。メルセデスの本社ロビーの正
面には初代の車が展示してあり、車の老舗であることを感じました。
今から振り返ると、メルセデスとクライスラーの合併はカルチャー
の違いを克服できなかったのかなと思います。換言するとナレッジ
の共有が今一ということであったのでしょう。
 ロンドンでブリティッシュファウンデーションを訪問した際バー
クレイ銀行のナレッジ・マネジメント担当の部長からバークレイに
おけるKMについて説明を聞くチャンスがあった。彼女は新入社員
のとき不慣れからいろいろミステイクを繰り返した。翌年になり新
入社員が彼女と同じようなミスを犯すのを知り、マニュアルを作成
し同じミスを繰り返さないようにした。これがバークレイにおける
知識共有の始まりで、知識共有の重要性に気が付いた銀行によって
KM部が設置され彼女が部長に任命させたそうです。彼女が知識共
有の重要性について力説しているのが大変印象に残っりました。
 日本ナレッジ・マネジメント学会は設立してから10年経過しまし
た。当初ナレッジについては野中先生の有名なSECI理論に始ま
り、いかにして個人知を共有して組織知にし、新たな知識の創造に
つなげるかが一番の大きな問題として取り上げられ、実践上の研究
がなされてきました。
 知識は企業経営において人、物、金と並ぶ重要な要素と認識され、
知的資産経営報告書が作成公表されるようになりました。
 知識が企業の資産として認識されると、知識の基は何かが次の課
題になり、知識は他の動物には無い人間固有のものであると考えら
れます。人間の持つ発生以来の長い経験がナレッジのベースになっ
ていることを考えれば、ナレッジの研究は人間の研究に他ならない
と言えます。
 人間の持っているナレッジを如何に使うかはその人の持っている
知恵に左右されます。知恵はナレッジに対する上位概念と考えられます。

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◆リスクマネジメント研究部会 平成19年度報告(1)
(日本ナレッジ・マネジメント学会 名合正二)

第34回リスクマネジメント研究部会
1.日 時  4月13日(金)午後6時30分?午後8時30分
2.場 所  東京富士法律事務所 会議室
3.出席者  14名
4.議 題  「今年度方針の説明」 眞崎達二朗

○平成19年度 リスクマネジメント研究部会方針
 今年度は概ね下記の順序で検討を進める

(1)リスクマネジメントの源流と基本セオリー
(2)新たなリスクマネジメントの流れ?ERM、内部統制・
CSRとリスクマネジメント
(3)わが国企業のリスクマネジメント 失敗例と成功例 
(4)コーポレートガバナンスとの関わり
(5)メンバーそれぞれの視点からのリスクマネジメントについて
(6)将来への提言?コーポレートガバナンス、内部統制下の
リスクマネジメントの在り方について

○「リスクマネジメントの源流と基本セオリー」発表者 名合正二 
(要 約)
リスクマネジメントはアメリカの経営者団体のニーズから生まれ、
そのルーツは1930年代のアメリカ企業における保険管理にある。
1960年代には産学協同で実務と共に研究され、その理論化・体系化
が大いに進展して世界各国に広がっていった。しかし、わが国にお
いては「リスク」を「危険」と訳したこともあって「リスク」につ
いての正確な認識がなされず、また常にリスクの伴う狩猟型民族と
そうでない農耕型民族のリスク観の差や日本人の仏教的諦観ともい
うべきメンタリティなどがリスクマネジメントの発展を阻害してき
たのではないか。更には、元々リスクをマネジメントするために設
立された欧米の株式会社制度と近代国家建設のために国策として移
植されたわが国株式会社制度の成り立ちの違いや、わが国の含み資
産等の企業会計制度やメインバンク制が強力に企業リスクをヘッジ
してきたためにリスクマネジメントがさほど必要に迫られなかった
こと等も遅れた理由と思われる。しかしながら、環境変化に伴って
わが国の企業も自らの主体的なリスクマネジメントが不可欠な時代
となっており、その推進に当たっては基本的なセオリーである「リ
スクマネジメント・サイクル」の概念を抑えておく必要がある。こ
のサイクルとは、(1)リスクの洗い出し(2)リスクの分析・評価(3)リス
ク処理の検討(4)リスク処理の実行(5)結果のトレース、の5つのステ
ップを回して組織におけるリスクマネジメントの継続的なレベルア
ップを図る考え方である。

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編集・発行:日本ナレッジ・マネジメント学会(KMSJ)事務局(森田隆夫)