No.81 2014年5月30日発行 | 日本ナレッジ・マネジメント学会

メールマガジン

No.81 2014年5月30日発行

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   日本ナレッジ・マネジメント学会メールマガジン 
   第81号  2014/5/30
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 編集・発行:日本ナレッジ・マネジメント学会(KMSJ)事務局

□ 目 次

◆巻頭言
 ―スマート工業社会がもたらす知識理論大混乱の時代にどう対処するか―
◆知の創造研究部会主催6月13日研究会のご案内
◆新部会の設立を決定、大企業をSECIモデルで変革
◆会員の活動をインタビュー記事で情報発信、6月号から
◆五十嵐寿恵さんの「英国留学たより」
◆学会誌『ナレッジ・マネジメント研究』第14号の投稿募集について

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◆巻 頭 言◆
――スマート工業社会がもたらす知識理論大混乱の時代にどう対処するか――
(日本ナレッジ・マネジメント学会専務理事 山崎 秀夫)

 日本KM学会は設立以来、「知のピラミッド」に代表されるDIKWモデル(情
報工学の流れ)とSECIモデル(経営学の流れ)の間で揺れ動いて来ました。
はっきり言ってどちらに軸足を持つのか明確にして来ませんでした。

 しかしここに来てあらゆる産業がインターネットに繋がる「モノのインター
ネット」の時代が到来し、「ネットサービス型産業化」の進展や「スマート工
業社会」と「繋がり型生活者」やクリエイティブクラスとよばれる「繋がり型
ナレッジワーカー、フリーランス」が活躍する時代を迎えています。特にモノ
に価値を持つモノ支配論理に依拠した工業社会に活躍した多くの製造業がスマ
ート工業社会は、サービスが価値を持つサービス支配論理に依拠した「ネット
サービス型製造業」へと転換を始めています。大きな環境変化が起こっている
訳です。

 その結果、知識理論は大きくDIKWモデルに基礎を置く「機械の知」(ビッグ
データのような人工知能)、主に組織の外からアイデアを募る集合知、そして
従来の経営学に基礎を置く知識理論(SECIモデルや組織IQ、学習する組織論
など主に組織内の知識に注目する理論)と言う三つの流れが出来始めています。

 そして世間では特に人工知能に基づく「機械の知」が力を持ち始めています。
そして「機械が知識を創造する」と言った世間の風潮は今後益々加速するでし
ょう。

 そう言った状況の中、日本KM学会の方向性はどうあるべきでしょうか?
 筆者は以下のような提案をしたいと思っています。

1、学会によるロボット三原則支持の宣言

 SF作家のアイザック・アシモフはロボットモノの小説の中で以下のような
「ロボット三原則」を宣言しました。

 ・第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過
 することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。

 ・第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。
 ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。

 ・第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、
 自己をまもらなければならない。(出所:我はロボット)

 日本KM学会はICT技術の進歩やインターネットの進歩に基づく機械の知
=機械が知識を作り出す時代を大歓迎します。しかし機械の知は「人と人間社
会に奉仕するもの」と言う姿勢が基本です。そして同時に「知識創造や活用は
人と人間社会が中心である」と宣言します。機械は知識を作り出すかもしれま
せん。しかしその発明や創造性はハードウエアやソフトウエアを設計したクリ
エーターに帰結すると考えます。

2、ヒューマンな知識創造の理論を研究の中心とする

 日本KM学会は自由かつ多彩な研究を醸成する機関ですが、学会の軸を人中
心の知識創造研究に充てると宣言します。それにはSECIモデルや学習する
組織論などのような人中心の理論が含まれます。特に暗黙知研究を進める日本
の生み出したSECIモデルは秀逸である宣言します。

3、重点領域として集合知理論の研究を追加する

 従来の工業社会のメーカーを対象とした経営理論は、主に組織の中の知識創
造を重視して来ました。しかしスマート工業社会における勝ち組の米国アップ
ルなどは外部の集合知を活用してアプリと呼ばれる百万種類の多様なサービス
を作り出して、カナダのブラックベリーなどのライバル企業を撃破しています。
一方社内組織の創造性のみに依拠した国内家電メーカーは「家電崩壊」と言う
大赤字の憂き目にあっています。また東日本大震災ではテレビに出演した多く
の地震専門家の知識は大外れし、逆にツイッターなどの外部の指摘などが正解
でした。こう言った状況下、集合知理論の研究は学会として避けて通れないと
考えられます。またこの領域は今後機械の知とヒューマン中心の研究との端境
領域になります。

 要約すれば「機械の知の研究は飽くまで人の創造性と見るべき」「学会とし
ては人中心の理論探求を深めるべき」「組織の外の集合知研究を深めるべき」
と言う提案をした訳です。

 20世紀の電力ネットワークがありとあらゆるモノを電力に接続し工業社会
を作り上げたように、21世紀のモノのインターネットはあらゆるモノ、人、
施設をインターネットに繋げ、ソフトウエアが作り出す「サービス支配論理」
が価値創造やビジネスモデルの中心になります。GEの提案した産業インター
ネットが米国の国策となり、ドイツでもインダストリィ4.0が国策となる中、
日本KM学会も新たな理論構築を始め、その為の姿勢(スタンス)を決めるべ
き時にきています。

 

◆知の創造研究部会主催6月13日研究会のご案内
(日本ナレッジ・マネジメント学会知の創造研究部会長 植木英雄)

 知の創造研究部会(第27回)を下記の要領で行ないますので、ご案内いたし
ます。第1報告では、法政大学大学院政策創造研究科の近藤博子氏が「ビジネ
スモデルの転換戦略による経営革新と知の創造―富山県の医薬品製造業の事例
研究―」について発表されます。

 第2報告では、一橋大学大学院ICS特任講師の廣瀬文乃氏から企業の社会的価
値創造について、企業のソーシャル・イノベーションに関する取り組みをCSR
やCSVの流れを踏まえつつ、企業の社会的価値創造を知識創造の観点で論じて
頂きます。今回は、ネスレと伊藤園の新しいケースを中心に発表して頂きます。

 参加者の皆さんとの質疑・討論でさらに深堀されることが期待されます。
それでは、多くの皆さんのご参加をお待ちしております。

【第27回研究会の概要】

日時:6月13日(金)午後6時-8時30分(午後5時50分より会場受付)
会場:東京経済大学葵友会大手町サテライト(大手町ビル533号室)
   (地下鉄丸の内線、千代田線大手町駅ビル5階)

報告1:法政大学大学院政策創造研究科 近藤博子 氏

テーマ:「ビジネスモデルの転換戦略による経営革新と知の創造
     ―富山県の医薬品製造業の事例研究―」
(午後6:10?7:10、含む質疑応答)

報告2.一橋大学大学院ICS特任講師 廣瀬文乃 氏
テーマ: 「企業の社会的価値創造に関する取り組み
      ―ネスレ・伊藤園のケースを中心に―」
(午後7:20?8:30、含む質疑応答)

司会:植木英雄 部会長(東京経済大学 経営学部教授)
参加費:研究会無料
懇親会:素材屋大手町店(飲み放題込みで3、500円程度)

※ 研究会への参加希望者は、会場・資料の準備上、6月9日迄
に下記のフォーマットでご連絡願います。
連絡先: 知の創造研究部会長 植木 h-21ueki@tku.ac.jp

6月13日開催第27回研究会の出欠ご連絡のお願い
********************フォーマット*********************
研究会:参加_ 欠席_(該当以外を削除願います。)
懇親会:参加_ 欠席_
氏名:
所属:
連絡先E-メール:
*******************************************************
植木英雄 KMSJ 知の創造研究部会長 h-21ueki@tku.ac.jp

 

◆新部会の設立を決定、大企業をSECIモデルで変革
(日本ナレッジ・マネジメント学会事務局)

 今年度の新規研究部会として、「SECIモデルによる持続可能性経営研究部会」
(仮称)を発足させます。
 これは、野中郁次郎先生に監修をお願いし、大企業をモデルにSECIモデルを
適用した持続可能性経営への変革に取り組むという内容です。日本の大企業は、
企業業績こそ回復に転じているものの、縦割り組織の弊害(サイロ問題)や、
海外展開における現地化の困難さなど、グローバル化への対応に際し克服すべ
き課題が山積しています。これらの課題の底流には、多くの日本企業が抱える
より本質的な問題があると指摘しているのが最近の野中理論であり、この課題
の克服にSECIモデルを適用する研究を進めようというのが新プロジェクトの趣
旨です。6社程度の大企業の参加、協力を得る予定ですが、5月現在、参加企業
もおおむね固まりつつあり、夏ごろまでには新プロジェクトとして発足させる
予定です。部会長は本学会理事で、エーザイ知創部長の高山千尋氏が務めます。
学会活動としては、画期的な試みであり、理事会でも大きな期待の声が上がり
ました。詳細が固まり次第本メルマガで続報いたします。

 

◆会員の活動をインタビュー記事で情報発信、6月号から
(日本ナレッジ・マネジメント学会事務局)

 本学会では、学会の活動内容を広く社会に知ってもらうため、研究部会や会
員の方々の様々な取り組みをメールマガジンやホームページに掲載して広報し
てゆくことになりました。このため、随時、関係者にインタビューを行い、「
ナレッジマネマネジメントの現在」というタイトルで記事化して行きます。会
員相互間の情報の共有の一助にもなると見込まれます。

 インタビューに登場いただくのは、様々な方を想定しています。大学や研究
所の研究員、各部会長は無論の事ですが、企業の最前線でご活躍の一般会員の
方々にもぜひ登場願いたいと考えています。インタビューさせていただいた方
の写真のほか、必要に応じ施設の写真、表、グラフなども付けてPDFでビジュ
アルな紙面作成をめざします。インタビューに際しては、インタビュアーが事
前に登場者の方と掲載内容を相談し、より効果的な情報発信がするようにいた
します。インタビュアーは学会矢澤洋一理事を予定。6月号から随時掲載いた
します。初回は、エーザイの高山千尋知創部長(本学会理事)の予定です。

 

◆五十嵐寿恵さんの「英国留学たより」

 本学会法人会員の富士通ラーニングメディア社から英国に派遣留学をされて
いる五十嵐寿恵さんから「英国留学たより」が本メルマガ編集部に届きました。
五十嵐さんは、知の創造研究部会や年次大会に参加され的確な質問を良くされ
ていましたが、実は理数系のキャリアをお持ちです。

 英国の大学院の教育やライフスタイルの一端などの近況を本メルマガでお伝
えしたいと思います。異文化の知の交流のきっかけになることを期待していま
す。(知の創造研究部会長 植木英雄)

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 学会の皆さま、大変ご無沙汰しております。富士通ラーニングメディアの五
十嵐です。皆さまお元気でお過ごしでしょうか。現在私は、英国サウサンプト
ン大学の修士課程にて、企業の人材開発にフォーカスをあて、研究しておりま
す。本メルマガで「英国での生活の様子」と「大学の授業の様子」についてご
報告させていただきます。

<英国での生活の様子>
 現在、私は英国南部のサウサンプトンに住んでいます。
 サウサンプトンは、ロンドンから電車で1時間15分程度の距離です。英国の
中では温暖な気候で、かつ夏は比較的涼しく、過ごしやすいです。サウサンプ
トンには、クイーンメアリー号などクルーズ船が停泊する港があり、また吉田
麻也選手が所属するサウサンプトンFCの拠点でもあります。サウサンプトンは、
学生の町でもあり、比較的治安もよく、住人も親切です。生活するにはとても
よい町だと思います。現在、サウサンプトンでの生活がとても気に入っていま
す。

 しかしながら、渡航直後は、日本との違いに戸惑うこともありました。特に、
事務手続きは時間がかかり、予定通りにいきません。銀行口座を開くのに1週
間、ビザ延長手続きに2ヶ月、病院、歯医者2週間待ち・・・。ですが、各種店
舗は閉店30分前から閉店準備を開始し、時間通りに閉店します。
(見方を変えれば、個人の時間をとても大事にしているのかもしれませんね。)
「日本で行う場合の1.5倍の時間がかかる。」と見積もるようにしてから、
手続きに関してはストレスなく過ごせるようになりました。日本の手続きや管
理は本当にすばらしいと、実感しております。


<大学の授業の様子>
 同じ専攻の学生は、60名程度います。英国含めEU,中国、サウジアラビア、
カザフスタン、ザンビアなど様々な国から学びにきています。特に中国人は全
体の1/4?1/3を占めており、本当に多い印象です。日本人は私しかおりません。
様々な国の状況を教えあえるのは、多くの発見があります。

 授業は週に3コマ程度ですが、課題が膨大です。コースごとにエッセイを記
述しますが、Critical thinking が重要視されております。エビデンスベース
で批評するためには、多くの記事を読む必要があり、ハードに感じています。
冒頭で、「企業の人材開発」の研究をしていると述べました。私の専攻の各コ
ースは、リサーチメソッド(質的、量的研究法)やフレームワークを用して、
自分の現状の課題に対して、分析や提案をします。例えば、先日の課題では、
私自身の実務経験に基づき、ある日本のクライアントに対する研修評価法の改
善のための企画書を記述しました。講師が英国Armyの研修評価のコンサルタン
トをされている方であり、このような実践経験豊富な方から助言をいただき、
新たな気づきを得ることができました。

 加えて、プライベートで、「習字」をこちらの子供たちに教えています。小
学校から大学まで書道を習っておりましたので、その杵柄です。私自身、「教
える、伝える」という面で勉強させていただいています。(「はらい」や「は
ね」など説明するのは、なかなか難しいものです・・・。)


帰国後に、学会の皆さまに改めてご報告させていただければと考えております。
今後ともご指導のほど、どうぞよろしくお願いいたします。(五十嵐寿恵)

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●写真と地図は以下のURLにてご覧下さい。
http://www.kmsj.org/archive/no81_5_photo.pdf

 

◆学会誌『ナレッジ・マネジメント研究』第14号の投稿募集について
(『ナレッジ・マネジメント研究』 編集委員長 植木英雄)

 学会誌『ナレッジ・マネジメント研究』第14号の投稿(論文および研究ノー
ト)を募集いたします。投稿規程と執筆要項(学会ホームページリンク先に掲
載)に基づき、2014年10月31日(金)までに投稿原稿とメディアを学会事務局
学会誌編集委員会宛てに送付してください。

 なお、投稿を希望される方は9月30日(火)までに投稿の意思と題名を編集
委員長まで事前にメールでお知らせ願います。
(編集計画の参考にさせていただきます。)
会員の皆さんの奮っての投稿をお待ちしております。

『ナレッジ・マネジメント研究』投稿規定
http://www.kmsj.org/news/nenpou_kitei.pdf
『ナレッジ・マネジメント研究』執筆要項
http://www.kmsj.org/news/nenpou_youkou.pdf

連絡先:学会誌編集委員長 植木英雄 E-Mail: h-21ueki@tku.ac.jp
送付先:日本ナレッジ・マネジメント学会事務局 学会誌編集委員会 宛
〒103-0022 東京都中央区日本橋室町3-1-10田中ビル4階

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<編集後記>
メルマガの内容についてのご意見、ご感想及びメールアドレスの変更などは
以下のアドレスにお願いします。          (編集長 松本 優)

学会アドレス:kms@gc4.so-net.ne.jp
編集・発行:日本ナレッジ・マネジメント学会(KMSJ)事務局(森田 隆夫)
問合先 日本ナレッジ・マネジメント学会事務局
TEL:03-3270-0020 E-Mail:kms@gc4.so-net.ne.jp