No.44 2011年4月15日発行 | 日本ナレッジ・マネジメント学会

メールマガジン

No.44 2011年4月15日発行

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   日本ナレッジ・マネジメント学会メールマガジン 
   第44号  2011/4/15
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 このたびの東日本大震災により被害を受けられました皆さまに
 謹んでお見舞い申し上げます。
 皆さまの安全と一日も早い復旧復興をお祈り申し上げます。

 編集・発行:日本ナレッジ・マネジメント学会(KMSJ)事務局

□ 目 次
◆ナレッジマネジメント講演会を開催いたします。
◆知の創造研究部会5月20日開催のご案内
◆東日本大震災に思う

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◆ナレッジマネジメント講演会を開催いたします。
(日本ナレッジ・マネジメント学会事務局)

今年の4月より、定期的にナレッジマネジメントに関する講演会を
開催することとなりました。
ナレッジマネジメントの最新、あるいは専門的な知識や情報などを
得る機会を設けて、会員の皆様が積極的に学会の活動へ参画できる
機会を増やしていくことを目指します。

・会 場:東京都南部労政会館
 東京都品川区大崎1丁目11-1 (大崎ゲートシティ隣接)
 JR大崎駅 南改札口より徒歩3分

・日 時:隔月開催 18:30-20:30

・参加費:本学会員 無料、会員以外1,500円

・お申込方法
※現在は、4月20日と5月11日の参加申込を受け付けております。
 ふるってお申し込みください。

 日本ナレッジ・マネジメント学会事務局へ
 1.会員の種別(個人・法人・非会員)
 2.氏名
 3.所属を記したメールで申し込んでください。
 申込先E-Mailアドレスは kms@gc4.so-net.ne.jp です。
 申込メールの件名は「4.20講演会参加申込」または「5.11講演会参加申込」
 として下さい。

・講演会プログラム
 4月20日(水)「ダイバーシティ(多様性)を組織に活かす」
 講師:北尾真理子(株式会社ダイバーシティオフィスKITAO代表)

 5月11日(水)「地デジ後を語るスマートテレビとナレッジマネジメント」
 講師:山崎秀夫(日本ナレッジ・マネジメント学会専務理事)

 7月13日(水)「顧客ナレッジ からの企業変革(仮)」
 講師:澤谷みち子(日本ナレッジ・マネジメント学会理事)

・問合先 日本ナレッジ・マネジメント学会事務局
 TEL:03-3270-0020 E-Mail:kms@gc4.so-net.ne.jp

◆知の創造研究部会5月20日開催のご案内
(知の創造研究部会長 植木英雄)

第15回研究会を下記の要領で行ないますので、ご参集願います。
今回は日立建機?の後明 廣志氏から、日立建機における新製品の開発
(モデルチェンジ) にウエイトを置いたVE活動の展開について最新の
事例を発表して頂きます。後明 氏は日立CVS会の会長をされており、
日立建機におけるVE(バリューエンジニアリング)センター長を歴任
され、指導的な役割を果たしてこられたVEの第一人者です。同社では、
1970年のVEC活動の開始以来製品価値、顧客満足、企業満足の融合を
目指した活動を深化させ、マイルズ賞を2度受賞しておりますが、近年新
製品の開発へとVE活動の展開を拡充しており、まさにナレッジ創造経
営を実践された事例を発表して頂きます。VEの新展開と知の創造の関
連性について参加者の皆さんと質疑・討論を行ないたいと思います。

日時: 5月20日(金)夜6時10?8時30分
会場: 大手町ビル533号室(東京経済大学葵友会オフィス)
   (地下鉄大手町駅ビル5階)
報告者:後明 廣志 氏 (日立建機?開発・生産統括本部事業戦略室
VMコンサルタント)
テーマ:「日立建機における新製品の開発 (モデルチェンジ) にウエイト
を置いたVE活動の新展開」
コメンテータ:児玉 啓 氏(マネジメント・コンサルタント)
(報告70分、コメント10分、質疑・討論60分を予定)
司会: 植木英雄・研究部会長(東京経済大学教授) 
参加費:一般参加者歓迎・無料、会場・資料の準備のため参加
    を希望される方は部会長までご連絡願います。 
連絡先:研究部会長 植木 h-21ueki@tku.ac.jp
皆様のご参加をお待ちしております。

◆東日本大震災に思う         
(リスクマネジメント研究部会長 眞崎達二朗)

 平成7年(1995年)1月17日の朝6時少し前、当時都銀系の損害保険
代理店に勤務していた私は、朝食の最中関西で大きな地震が起こっ
たと言うTVのニュースを見ていた。神戸の震度計は振り切れて、
ニュースでは最大震度は京都と報じていた。8時ころ会社に出社して
TVで見た神戸市街からは何本かの火災の煙が立ち登っていた。大阪
の本社と専用線が通じていたが誰も出社して来ない。9時近くによう
やく連絡が取れた。
 翌日のJALの最終便で関西空港に向かった。着陸寸前に機窓から
見た神戸の街はまだ赤く燃えていた。二週間後JRが住吉まで開通し、
三の宮にある支店の水道が復旧したので神戸に向かった。住吉から三
の宮まで歩いたが道路は波打っていた。市街地は寒く、断層の上だけ
が不公平に被害を受けていた。三の宮の商店街は惨憺たるものであっ
た。帰途神戸の波止場から平時は遊覧船のサンタマリア号にすし詰め
になって大阪の天保山に帰った。そこには普通の生活があり、ひどい
違和感を覚えた。
 次は、首都圏直下型地震だろうと覚悟していたが、生きている間に
東日本大震災が起こってしまった。阪神淡路大震災は震災と火災で被
災区域は比較的狭かった。今回は震災・火災に加え大津波の災害、更
に原発事故災害が加わり、被災区域は広く、そこに電力不足が重なっ
ている。

 感想を3つ申し上げたい。

?想定外ということ。
 TVでコメンテーターが津波の専門家に「今後は20M?30Mの防潮
堤を作らなければなりませんネ。」と質問をしたら、彼は「それは
財政的に恐らく不可能だから、想定以上の地震と大津波が発生した場
合如何に早く安全なところに逃げるか、或いは住居を高台にするか、
などが対策となる。」と言っていたのが印象的であった。
 研究仲間が、2007年7月24日に福島県共産党委員会が東京電力株式
会社に出した申し入れを教えてくれた。HPを見ると、申し入れの第
4項で「福島原発はチリ級津波が発生した際には機器冷却海水の取水
が出来なくなることが、すでに明らかになっている。これは原子炉が
停止されても炉心に蓄積された核分裂生成物質による崩壊熱を除去す
る必要があり、この機器冷却系が働かなければ、最悪の場合、冷却材
喪失による苛酷事故に至る危険がある。と指摘し、そのため私たちは、
その対策を講じるように求めてきたが、東電はこれを拒否してきた。」
と記述されている。それが現実となってしまった。
 企業は一定レベルのリスクを「想定」して対策を行う。例えば、地
震対策の際に、関東大震災クラスを一つのメルクマールにしたり、古
文書を紐解いて、過去の最大クラスの津波を想定する。想定していな
いことへ対応することは、サラリーマン的には矛盾することになる。
 本来は想定以上のリスク発生については「自己保有する」という考
えであるべきだが、そういった先進的な企業はごく一部で、一般的に
は、「想定外」のことは「起こらない」と整理していると思われる。
「起こらない」ことに対しては、もちろん対策などは打たない。
 金融の世界の、サブプライム・ショックやリーマン・ショックにつ
いても似たようなことが言える。金融システムの場合経済は混乱する
が人の命を奪うことはない。
 私は中小企業BCPのセミナーでは、小規模事業者等では災害発生
時に事業をやめるのも対策の一つで、その際金融機関への保証債務・
従業員の処遇等を事前に考えて置くこともBCPだと言っていて、こ
れは同感を得ていた。企業の体力に応じた想定リスクのレベルを定め、
企業の想定以上のリスク発生時にはどうするかを考えて置く(企業倒
産を含め)のが現実的だと私は思う。 
 個別企業のリスク管理の場合は企業の命運と従業員の命にかかわる
が、世の中への影響は少ない。しかし、国とか地方自治体、或いは原
子力発電など、「想定外のことが起こってはいけない」ところがそれ
で良かったのかが今回シビアに問われていると考える。
 或る電力会社のリスクマネジメント担当者が、「今回のことを契機
に、原子力、周波数問題、そして、そもそも電気事業が国との分担を
含めどうあるべきとの議論が行われると思います。その中で、真摯に、
謙虚に、今回のことを受け止めたいと思っています。」言っているが
誠に尤もである。
 ピーター・バーンスタイン著「リスク」(日本経済新聞社・1998年)
の原題は「AGAINST THE GODS」?神々への反逆?で
ある。バーンスタインは、「昔は未来は神々の思し召しによるもので、
人々はどうすることも出来ないものであった。リスクマネジメントは、
ギリシャ神話に出てくるプロメテウスが神に挑戦し、火を求めて暗闇
に明りをもたらもたらしたように、未来という存在を敵から機会へと
変えていった。」と言っている。彼は主として証券投資におけるビジ
ネスリスクについて論じているが、企業のリスクマネジメントやBCP
(事業継続計画)についても同じことが言えるであろう。但しその場
合「自然災害のリスクの想定」に関しては、関係者は神々の領域に踏
み込み、神をも畏れぬ行為(想定に対する過信)をしていたのではない
かと考える。
(本項については研究仲間のご意見に負うところが大きい。記してお
礼を申し上げる。)

?50ヘルツと60ヘルツ
 前項の最後に「周波数問題」という言葉がある。
 2003年夏、関東では東京電力の原子力発電所(福島原発)が停止し、
首都東京における大停電が予測されたが幸い乗り切った。その時、私
はBCPの関係で或るシンクタンクと一緒に中部電力・関西電力・中
国電力のヒアリングを行った。
 中部・関西・中国・九州・四国電力等西は60ヘルツ、東京・東北
・北陸・北海道電力等東は50ヘルツである。東北・北陸・北海道電
力は小規模で供給余力に乏しく、東京電力の電力不足を十分補えない
と言う状況であった。ところが、60ヘルツを50ヘルツにする周波数変
換装置は最大100万KWの変換能力しかないので、西側電力会社として
は供給余力はあってもそれ以上の協力は不可能だということであった。
私は、「それでは周波数変換装置の能力を増大すべきではありません
か」と質問したところ、西側は費用負担の問題などがあり、難しいと
い言う感じであった。
 私は、政府のエネルギー政策関係者・東電の関係者は当然判ってい
ることだから、早急に周波数変換装置の能力アップをしなければ再度
問題が起こると痛感した。これは50ヘルツ地帯の電力供給確保の根本
問題である。その後中部電力は30万KWの周波数変換装置を増設したが、
東電側の送電線の事情で10万KW分しか使えないという。今回の事態で
再び周波数変換能力問題が議論されている。
 「通天閣のネオンを消して、関東地区の節電に協力しようと思うた
が、上手くいかんようデンナ。」と大阪の通天閣の社長がTVで話を
していた。これは本来、政府の危機管理対策の問題であるが、東京電
力としても供給責任の見地からもっともっと問題点を主張し、対策を
講ずべきではなかったかと考える。
 供給余力に対する電力各社側の言い訳 「電力各社は供給予備率を
確保した電源構成となっています。今回のような事態に備えた供給予
備率は過剰設備を持つことになり、それこそ、減損処理の対象になり
ます。」も一応理解出来るが、『リスクの内容に応じて、想定外の事
象が起きた場合の対応をどう考えるのか?』の一つの解として、想定
外の津波の際は逃げると言った発想で、変換設備の増強を政府・東電
・電気業界でもっと考えていても良かったのではないか。

?企業の被害は自助。
 阪神淡路大震災の時、兵庫県議会で「地震による中小企業の被害を
国や県は救済出来ないのか。」と言う質問があったが、「資本主義社
会だから特定の企業に国費や県費を出すことは出来ない。長期低利融
資で助ける。利息は出来るだけ補給するのが限度だ。」という建前の
答えが述べられた。
 今回、福島第一原子力発電所の事故による農業・漁業の損害につい
て補償は当然のことと議論されているが、企業の損害についてはあま
り聞かれない。

 「原子力損害の賠償に関する法律」
 第二章 原子力損害賠償責任(無過失責任、責任の集中等)
 第三条 、「原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子
 力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者が
 その損害を賠償する責めに任ずる。
 ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて
 生じたものであるときは、この限りでない。」

の規定に拘わらず、政府は今回の経緯に鑑み、第一義的に東京電力が
損害賠償を行うべきだとしている。
 一方、「電気供給約款」の下記の約款が計画停電の根拠だと思われる。

 40 供給の中止または使用の制限もしくは中止
 (1) 当社は,次の場合には,供給時間中に電気の供給を中止し,ま
 たはお客さまに電気の使用を制限し,もしくは中止していただくこ
 とがあります。
 イ、ロ、ハ(略)
 ニ、非常変災の場合

 計画停電による企業の損害について、「原子力損害の賠償に関する
法律」に関するような議論、「損害を賠償する。第一義的に東京電力
が負担する。」と言った議論は全く行なわれない。東京電力の負担能
力の問題はあるだろうが、それで良いのだろうか。

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編集・発行:日本ナレッジ・マネジメント学会(KMSJ)事務局(森田隆夫)
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