No.29 2009年12月9日発行 | 日本ナレッジ・マネジメント学会

メールマガジン

No.29 2009年12月9日発行


 日本ナレッジ・マネジメント学会メールマガジン 第29号

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 日本ナレッジ・マネジメント学会メールマガジン
 第29号   2009/12/9
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編集・発行:日本ナレッジ・マネジメント学会(KMSJ)事務局

□ 目次
[学会からのお知らせ]
◆第13回年次大会の開催について
(日本ナレッジ・マネジメント学会事務局)

◆知の創造研究部会12月研究会のお知らせ
(知の創造研究部会長 植木英雄)

◆訃報:岩岡保彦氏
(日本ナレッジ・マネジメント学会事務局)

[転載記事]
◆メルマガ「クリエイジ」第276号 2009年11月30日より

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◆第13回年次大会の開催について
(日本ナレッジ・マネジメント学会事務局)

来る2010年3月27日(土)に、東京飯田橋のあずさ監査法人センター
ビルにて、第13回目の年次大会を開催いたします。今回のテーマは
『知識社会への探索―In Quest of Innovative Society―』です。

プログラムなど開催要領の詳細は、追って本メールマガジンにて
ご案内いたします。

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◆知の創造研究部会12月研究会のお知らせ
(知の創造研究部会長 植木英雄)

下記の日程で知の創造研究部会を行ないます。
当日は、報告者との充分な討論の時間を持ちたいと思います。

               記
第9回研究会プログラム
日程:12月19日(土曜日)午後1:30-5:30
会場:東京経済大学国分寺キャンパス第3研究センター331会議室
JR中央線国分寺駅から徒歩約12分 www.tku.ac.jp
報告者とテーマ:
午後1:30-3:20(報告70分、コメント10分、質疑討論30分)
1.後明 廣志 氏 (日立建機?開発・生産統括本部VECセンター
           コンサルタント)
  「日立建機におけるVE活動の導入と展開について」
司会・コメンテーター:児玉 啓 氏(マネジメント・コンサルタント)
部会連絡・休憩(20分)
午後3:40-5:30(報告70分、コメント10分、質疑討論30分)
2.堀田 和彦 氏 (九州大学大学院農学研究院准教授)
  「農商工連携を題材にナレッジ ・マネジメント(SECIモデル)
の活用による知の創造(新商品の開発)に取り組む実証研究の成果
と事例の紹介」
司会・コメンテーター:植木英雄氏(東京経済大学教授)
参加費:無料
              以上

備考:会場・資料の準備の都合上、出席のご連絡を部会長宛てに
12月16日(水)までにお願いします。( h-21ueki@tku.ac.jp )

また、懇親・忘年会(会費3千円)への参加予定につてもご連絡願います。
第9回研究会のお知らせ(出欠ご連絡のお願い)
*************************フォーマット***************
第9回研究会:参加_  欠席_(いずれかに○を記入) 
懇親会:   参加_  欠席_(いずれかに○を記入) 
氏名:
***************************************************

皆様 のご参加をお待ちしております。
知の創造研究部会長・植木英雄

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◆訃報:岩岡保彦氏
(日本ナレッジ・マネジメント学会事務局)

去る11月26日、本会広報担当理事の岩岡保彦氏がご逝去されました。

つい先日に開催された「知的資産経営国際ワークショップ」では、
司会としてご活躍されており、あまりに突然の急逝でした。

岩岡氏には、長年にわたり本会の運営と発展のためにご尽力を頂きました。
故人の功績に感謝を申し上げるとともに、謹んでご冥福をお祈りいたします。

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◆メルマガ「クリエイジ」第276号 2009年11月30日より

目次
1.ビジネス書「ネットワーク思考」書評
2.人生で感銘を受けた本
[編集後記]

1.ビジネス書「ネットワーク思考」書評 小見志郎

○「ネットワーク思考のすすめ-ネットセントリック時代の組織戦略」
  一橋ビジネスレビューブックス
  西口 敏宏著 2009年7月 東洋経済新報社 価格:1,890円(税込)
  http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4492556494

 社会科学の面白さは、先行的に導かれた知の系譜を脈々と受け継ぎ、
それを深堀し、新たな知の地平線を描いていく作業にある。それを体現
した良書に巡り合えることは実に楽しいことであり、本書は、そのような
良書の一つである。

 本書での知の系譜は、国際的に著名な伊丹敬之が提唱した「場」の
理論をもとにしている。伊丹は産業集積の本質などでその理論を拡大
したが、その一連の作業の中に、「場のダイナミズムと企業」(2000年、
東洋経済新報社)がある。

 やはり著名な野中郁次郎らとの共著だが、そのなかで、西口は
「場への学際的接近」と「場と自己組織化」を論考している。それらを
踏まえて、組織ネットワーク論として著したのが、「遠距離交際と近所
づきあい」(2007年、NTT出版)であり、本書ではそのエッセンスを多少
まじめなタイトルでとりまとめるとともに、新しい理論枠組みを提示して
いる。

 著者のタイトルの付け方は実にユーモアに富んでいて、最新の一橋
ビジネスレビュー(2009年9月、57巻2号)では、「松本あすかという作品」
というタイトルの論文を発表している。この論文も同根の一連の研究
枠組みのなかに属する。しかし、著者は、伊丹、野中と並んで国際的な
評価が非常に高い日本の経営学者であり、トヨタの組織研究などで
優れた研究業績が多くあることで知られている。

 本書は、「ネットセントリック時代の組織戦略」とサブタイトルを付けて
いるように、新しい戦略ネットワーク論がフレームワークとなっている。
そして、大きく分けて、ネットワーク・セントリック論から深堀し、社会
システム論、そして、ソーシャル・キャピタル論という新しい境界領域
理論を展望して論考しているところに面白さがある。

 これらの理論は、サプライチェーンなど、どちらかというと工学的な
アプローチの研究フレームを経営学にもちこんで体系づけている
ところに特徴がある。

 ネットセントリックは、意思決定や活動の「中心」が特定の一点では
なく、ネットワークそのものにあるとする新しい考え方である。そこでの
キーワードは、リワイヤリング(情報伝達経路のつなぎ直し)である。
行き詰った企業が、新リーダーのもとで、組織改革を進め業績回復
するときには、必ずシステムの全体経路にリワイヤリングが大胆に
起こっているからである。

 「サプライチェーンのマネジメントに関連して、たった一つだけ、トヨタが
世界中のあらゆる競合他社と基本的に異なっていることがある。それは、
特定の選ばれたサプライヤー同士を横串的に結ぶ「バイパス」を巧妙に
制度化していること」がその典型的な例証だという。その「バイパス」は
「自主研究会」でトヨタ生産方式を現場で無限に改善していく研究会の
ことを示している。

 サプライチェーンの部分的なリワイヤリングとそれによる「ヨコテン」の
結果、自主研から発せられたネットセントリックな問題解決能力はトヨタ
のサプライチェーン全体に浸透し、サプライヤー間で蓄積され、日々の
オペレーションばかりでなく危急の際にもいかんなく発揮されるとする
ものである。

 その効果が端的に示された例が、「アイシン精機火災事故の教訓」に
まとめられている。同レポートでは、突発的な工場火災に伴う一連の
サプライチェーン面での混乱への対応力が、関係するサプライヤーが
一丸となった形で発揮され、半年かかるといわれた原状回復をわずか
10日間で成し遂げたという、すさまじい回復能力となってあらわされた
としている(この分析レポートは国際的に高く評価され、海外の論文で
数多く引用されている)。

 このリワイヤリング効果に加えて、もう一つ面白い事例がある。「四川
トヨタの物流改革」で示された揚子江ベルトコンベア化を実現した経緯
である。この改革では、物流の主力を鉄道から船に変えることで物流費
を30%カットしたが、さらに50%削減を目指したのである。トヨタ式
「平準化」など、いかんなくトヨタ生産方式が発揮されたばかりでなく、
地元政府や周囲の日系工場、船会社への好循環を生み出し、信頼を
形成したというものである。

 そのためには、担当者が幾日もかけて、揚子江の水位変化のデータ
収集や河川輸送の実態を写真撮影したりするなど、「見える化」にむけた
必死の努力をしている。揚子江を物流ハイウェイにするため、同河川と
社会との関係を具体的に捉えていったことを詳細に検証しているのである。

 このトヨティズム発揮のケース・スタディを通じて、ネットワーク論から
みた社会システム論、さらには、ソーシャル・キャピタル論の新天地を
論じている。とりわけ、ソーシャル・キャピタルは、これからの社会の
あり方に深く結び付く論点であるから、多少敷衍してみよう。

 ソーシャル・キャピタルは、パットナムの定義によれば、「人々の協調
行動を活発にすることによって、社会の効率性を高めることのできる
「信頼」「規範」「ネットワーク」といった社会的仕組みの特徴」、言い換え
れば、「相互支援のネットワークから得られる共有資産」「人と組織の
間の見えざる資産」というものである。

 著者は、「単純化していえば、ソーシャル・キャピタルの豊かな社会
では、かりに制度や法に不備があり、運用面で多少ギクシャクしても、
人々は、お互いの信頼にもとづく協働活動と問題解決力によって、
究極的には問題を克服し、低コストで全体目的を達成する」とみている。

 その文末に、著者らしい面白いコメントがある。引用が長くなるが
ご容赦いただきたい。「くり返すが、古くから「社会的習慣」、「習律」、
「民度」などと呼ばれたコンセプトが、近年「ソーシャル・キャピタル」
として再び脚光を浴びている。この優れて社会的な資産こそが、
理数系のネットワーク理論では歯が立たず、また、見落とされてきた
重要な側面であり、その真剣な再吟味が必要である。これなくしては、
意味あるネットワーク論はなりたたないとさえいえる。グラフ理論を
駆使したシミュレーションの世界を超えて、今後このような観点を取り
入れた、新しい社会ネットワークの実証研究が現れることが期待
される。」

 同感である。ゆえに、社会科学の知の地平線を少しでも切り拓いて
いく作業に参加していきたいものである。

2.人生で感銘を受けた本 小見志郎

○「米フツ-宋代マルチタレントの実像」あじあブックス 16
  塘 耕次著 1999年6月 大修館書店 価格:1,890円(税込)
  http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4469231568

 大修館書店の「あじあブックス」には、中国の漢方、漢詩、道教など
もろもろの歴史を深く知る出版物が並び、私のような門外漢から
みたら、ただただ感服する書物が多い。本書もその一つである。

 25年くらい前か、まだ文化大革命の爪痕が深く残る上海の街をうろ
ついていたころ、一つの掛け軸に出会った。そのときには、ただ漢字と
人物像が彫り込まれた石碑の拓本くらいにしか思ってなかったが、
それが蘇軾を称えたものであり、1000年前の中国宋の時代の人々の
生活が彷彿と浮かんでくるような漢文の内容であると分かってきて
からは、暇つぶしに詩人でもある蘇東坡の代表的文章「赤壁の賦」
を書き写す楽しみを覚えた。そうすると面白いもので、蘇東坡なる
ものの人物像を探るようになり、そうした過程で本書に出会った。

 書の世界は、王義之からの系譜が大筋だが、書の革命が宋の時代
に到来した。革命を担った人物は、蘇のほか、黄庭堅、米フツ、蔡襄で
ある。日本では、明治期に大きく書が変革しているが、そこにも大きな
影響を与えており、黄庭堅を高く評価する人たちが多い。

 宋代の書家で、米フツを除く3人はいずれも科挙に合格し、政治家
としても広く知られている。米フツは、そのなかで自由奔放に人生を
謳歌し、書を多く残している。じつに文化人とはかような人生を送る
のかということを、本書は教えてくれる。

 さて、宋の時代のことである。それまでの世襲的な政治家の時代
から、科挙という制度変革を行ったことによって、中国の歴史は大きく
変わっている。そのなかで、花開いたのが書であり、書画である。
それを担った人物が米フツであり、それを生み出した1000年前の
時代精神が、現代の日本の状況になにか似てくるような予感がして
いる。そんなことを考えさせる本である。ゆったりしたら、台北の故宮
博物館に行って、彼らの書をじっくり見てきたいものである。
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小見志郎(こみ しろう)略歴
 1970年東京工業大学理工学部社会工学科卒業、72年東京工業大学
大学院理工学研究科修了、同年野村総合研究所入社、93年社会
システム研究部長、96年サイバーコマース事業部長、2001年NRI
データサービス(株)監査役、05年県立広島大学教授、現在に至る。
 著書、中村秀一郎・石井威望編「ベンチャーマネジメント」(1983年、
日本経済新聞社 共著)、清成忠男編「ベンチャー技術新時代」
(1984年、日本経済新聞社 共著)、小見志郎「情報資産のリスク
マネジメント」(2004年、ぎょうせい)
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[編集後記]
 小見志郎氏には15号、132号、217号に続いて4回目の執筆をお願い
した。ネットセントリックとは、意思決定や活動の「中心」が特定の一点
ではなく、ネットワークそのものにあるとする新しい考え方で、リワイヤ
リング(情報伝達経路のつなぎ直し)が決め手とのこと。民主党への
政権交代に伴う会議体や組織の変更による成果もネットセントリック
で説明できるようにも思う。私も拙著「ネットワーク未来-新しい経済・
経営の見方」(1996年、日本評論社)に新しい政治の見方を加えて
いずれ書き直したいとも思う。(西脇隆)
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今日のコラム「出版界3大ニュース」
 出版界の今年の3大ニュースは次の通りか。第1は村上春樹「1Q84」
がミリオンセラー(220万部)、韓国や台湾でもベストセラーに、第2は
丸善、ジュンク堂、ブックオフが大日本印刷の傘下に、紀伊國屋は
凸版印刷と業務提携、第3は「フォーブス」「諸君!」「小学五年生」
「PINKY」など雑誌の休刊が続く、ことか。
 クリエイジの今年の3大ニュースは、第1はIFRS(国際財務報告標準)
や六法関連書籍の売上増、第2はビジネス書を中心に検索対象100万冊、
取扱書籍50万冊への拡大(書籍200万冊のうち絶版を除き流通している
のは70万冊)、第3は開業5年目のサーバ入れ替えで検索スピードなど
アップ。

「茶の花に暖き日のしまひかな」高浜虚子

(推薦書籍)
1Q84 BOOK1 4月-6月
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4103534222
1Q84 BOOK2 7月-9月
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4103534230
国際財務報告基準の実務 第4版
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4502299200
国際会計基準が変える企業経営-IFRS
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4532314577
テキスト国際会計基準 第4版
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4561351841
有斐閣判例六法Professional 平成22年版(全2巻)
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4641004102
有斐閣判例六法 平成22年版
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4641003300
ポケット六法 平成22年版
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=4641009104
模範小六法 平成22年版
http://www.creage.ne.jp/app/BookDetail?isbn=438515676X
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